研究課題
本年度は、琵琶と和琴に対象を絞り、調査を行った。琵琶については、宮崎県えびの市三徳院、鹿児島県大口市古畑宝覚氏、鹿児島県吹上町歴史民俗博物館蔵の薩摩琵琶、薩摩盲僧琵琶を調査した。盲僧琵琶の柱は6柱と言われていたが、柱を付け替えた跡があり6柱と断言できないこと、薩摩琵琶と同じ楽器を使用する場合もあったことが判明した。また熊本県熊本市熊本市民会館・福岡県豊前市求菩提資料館・大分県宇佐市県立歴史博物館、佐賀県立博物館に残る盲僧琵琶の調査も行い、筑前盲僧・国東盲僧が用いていた胴の細い笹琵琶にもさまざまな形態があり、転手や弦の留め口・響き穴などに個人的な工夫を施していること、おもちゃのような小型の琵琶も実要されていたことが判明した。筑前琵琶の影響を受けて表板をはめ込み式に製作する以前のものもみられた。また、伊勢神宮徴古館・熱田神宮宝物館所蔵の鶏尾琴について調査を行った。和琴の系統で、本来6弦であるはずの鵄尾琴だが、室町末期に遷宮がいったん途絶えた後、昭和になるまで13弦の箏の形態で製作されていたこと、伊勢神宮徴古館の鵄尾琴は『延喜式』に則って新たに製作されたことなどが判明した。琵琶と和琴の調査結果は、11月14日に文化財研究所主催でおこなわれた国際研究集会「日本の楽器-新しい楽器学へ向けて-」の中で口頭発表した。