研究課題
本年度は、琵琶に対象を絞り、調査を行った。山口県小野田歴史民俗資料館、山口市歴史民俗資料館、赤間神宮、福岡市博物館蔵の琵琶のほか、個人蔵の琵琶を数点調査した。小野田の琵琶は代々盲僧であった上村家から寄贈された物だが、形態としては筑前琵琶であった。また赤間神宮の琵琶は楽器内に正徳5年の銘があり、典型的な平家琵琶であったが、紐をつける環が見られた。盲僧が、平家琵琶を背負って行脚していたことがうかがえる遺品である。盲僧は、比較的現在まで九州で活動していたが、昭和初期までは山口県でも活動していたこと、盲僧特有の細長い形状の琵琶以外に筑前琵琶や平家琵琶を用いる例もあったことが判明した。また、盲僧琵琶は六柱と言われているが、昨年九州で調査した範囲では、必ずしも六柱とは言えないものもあった。だが今回、熊本県玉名市で調査した琵琶は、江戸期のまま手を加えずに保存されていた可能性が高い上、六柱であった。地域により、伝承が多様であったことが確認された。このほか福岡市博物館が所蔵する旧一丸家蔵琵琶の調査も行った。一丸家は筑前琵琶を始めた橘旭翁の実家で、江戸後期に福岡一帯の盲僧の取り締まりをしていた家である。ここで、筑前琵琶の定型ができる以前の形態を確認した。
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