平成13年度には、4月30日より5月12日まで、7月20日より9月12日まで、11月17日より30日まで、3月2日より4月1日までの計四回イタリアに研究目的の滞在を行った。また国内では、東京大学付属図書館、上智大学付属図書館などを利用して、神学的・図像解釈学的研究を行うとともに、イタリアで入手した資料の分析を行った。 イタリア滞在中の成果として、まず画家の作品カタログ作成のための研究の進展が挙げられる。ピサ、スクロフィアーノ、ヴォルテッラ、サンセポルクロ、チッタ・ディ・カステッロ、カシャーナ・アルタ、セッティニャーノの諸聖堂・美術館で実地調査と写真撮影を行い、撮影が不可能な場合も良質の図版・写真の入手に努めた。フィレンツェ近郊では、ヴィラ・イル・リポーゾ、ヴィラ・イ・コッラッツィ、フィレンツェ市内ではマルテッリ邸などの個人邸を調査し、写真撮影を行った。エンポリ、フィエーゾレの調査では、サンティ・ディ・ティートの作品が現在所在不明となっていることが判明した。 次に図像解釈学的研究であるが、主としてトマス・アクイナスを援用しつつ画家の約30点の作品の図像解釈に着手し、図像中で頻繁に扱われる主要論点を、(1)キリストの人性と神性の問題、(2)恩寵と功績の問題、(3)観想的生と活動的生の問題、(3)旧約聖書中の預言の新訳聖書における成就の問題、等に分類し、検討を開始した。 最後に同時代資料の研究であるが、ドメニコ会の旧サン・マルコ図書館蔵書、とりわけドミンゴ・ソート、ルイス・デ・グラナダら同修道会士の著作と、サン・マルコ修道院のセラフィーノ・ラッツィ神父の説教集の手写本が、それぞれフィレンツェのラウレンツィアーナ図書館及び国立中央図書館に保管されていることを発見し、マイクロフィルム化して入手、検討を開始した。
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