平成15年度には、4月25日より5月11日まで、7月18日より9月22日までの計二回イタリアに研究目的の滞在を行った。また国内では上智大学中世思想研究所を中心に神学的・図像解釈学的研究を行い、イタリアで入手した資料を分析するとともに、研究報告書の起草に取りかかった。 本年度は図像解釈的研究の成果の一部をフィレンツェ(イタリア)の美術史専門誌ARTISTA誌上に論文掲載した(2002年号、ただし出版は2003年6月)。トマス・アクイナス、アントニーノ・ピエロッツイ、ジロラモ・サヴォナローラ、ルイス・デ・グラナダといったドメニコ会の神学者・説教師らの文献を主要な典拠としつつ、サンティ・ディ・ティートの作品を(1)観想的生と活動的生、(2)恩寵と功績、(3)旧約の教え(律法)と新約の教え(愛)、(4)旧約の預言の新約における成就、(5)キリストの人性と神性、等の観点から分析した。 サンティ・ディ・ティートの全作品カタログ作成に関しては、署名・年記のある基準作品の実地再確認・撮影(サンティッシマ・アヌンツィアータ聖堂食堂壁画、サン・ジェルヴァジオ聖堂等)、かつて撮影した写真が不満足な場合の再撮影(サン・マルコ聖堂セッラーリ礼拝堂天井画、スクロフィアーノ、カシャーナ・アルタ)を行ったが、なおいくつかの作品については文化財監督局に図版を発注する必要があろう。サンタ・マリア・マッダレーナ・デイ・パッツィ聖堂祭壇画のプレデッラが1966年の洪水直後に行方不明となっており、しかも文化財監督局さえもその経過を把握していないことが、フィレンツェ修復研究所等の訪問調査から判明した。現在事実関係を追跡調査中である。
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