平成16年度には、4月23日より5月11白まで、および7月23日よリ9月23日までの計二回イタリアに研究目的の滞在を行った。 本年度の研究実施計画書に記した項目のうち、ヴァティカン美術館内エトルリア美術館壁画の撮影は実施できたが、オルヴィエートの大聖堂付属美術館所蔵作品の調査は、この20年ほど閉館している同美術館がいまだに当該作品の公開が不可能な状態にあることから、実現しなかった。またフィレンツェのサンタ・マリア・マッダレーナ・デイ・パッツィ聖堂所蔵の《オリーヴ園の祈り》の失われたプレデッラに関しても追跡調査を試みたが、フィレンツェの文化財監督局さえも実状を把握していない状況が再確認され、作品の逸失の可能性がさらに高まった。 本年度はフィレンツェのサンティッシマ・アヌンツィアータ聖堂食堂のフレスコ画《パリサイ人シモン家の晩餐》の背景左右に彫像を模して描かれている、二体の人物像を、旧約聖書に登場するモーセおよびアロンであると初めて特定した。損傷の激しい壁画の現状からは特定が困難であったが、1966年の大洪水以前のAlinari社撮影の写真を拡大することによって、モーセの所持物が二枚の板であることが明らかになった。この成果を本年度の茨城大学五浦美術文化研究所紀要(『五浦論叢』11号、11月30日刊行)にイタリア語で発表した(日本語要旨付)。 本年9月までの現地調査で、研究成果をほぼまとめ終わり、研究成果報告書の起草に着手した。平成17年1月初旬に執筆を終え、印刷・出版の準備に入った、報告書は3月22日に納入された。
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