平成13年度の研究では、当該研究のための基本的な文献・史料の収集と分析・整理、そしてデータ入力を中心に行った。まず、金工後藤家に関する先行研究の収集を行い、次いで、金工後藤家の本家に当たる後藤四郎兵衛家のご子孫後藤照子氏所蔵史料、ならびに京後藤家において中心的な役割を果たした後藤勘兵家ご子孫の後藤数馬氏所蔵史料の調査・翻刻を中心に行い、さらに、東京大学史料編纂所に寄贈されている史料と寄託されている史料ならびに目貫・小柄・笄をはじめとする諸作品の基礎的な調査を行った。先行研究の収集は、主として美術史(金工史)の分野における金工後藤家に関する研究論文や叙述を収集するとともに、金工後藤家の作品を紹介した文献の収集をも進めて、金工後藤家の作品の分布状況や伝来状況に関する情報収集を行った。また、刀装具研究者である福士繁雄氏の助言により、金工後藤家の諸作品の分類や取り扱い方法など、基礎的な知識の教示を受けた。次に、後藤四郎兵衛家関係史料については、御用日記などと呼称される用留類65点を精査し、そのうちとくに彫金家業に関連の深い記事を含む21点の解読を行った。その結果、作品の受注からはじまり、一族内における作業の分担、さらに作品の納品と料金の受領にいたる一連の過程を一定程度解明した。その他、後藤四郎兵家に関する諸資料の解読を進め、書付・書状・借金証文などを含む389点の解読、翻刻を行うとともに、翻刻の終了した史料については、データベース構築のためのデータ入力も完了させた。次に、後藤勘兵家に関する史料については、基本的な史料123点について調査を行った。さらに、勘兵衛家ゆかりの京都上徳寺において関連資料の調査も行った。東京大学史料編纂所に寄託されている諸作品については、いわゆる三所物など諸作品の目録作成のための準備を進めるとともに、福士繁雄氏による後藤家作品集の刊行に協力した。
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