平成14年度も前年に引き続いて、当該研究のための基本的な文献・史料の収集と整理・分析、さらにデータ入力を中心に行うと同時に、金工後藤家の諸作品の整理・分析を中心に行った。そして、それらの結果に基づいて、後藤家の御家彫の技術的特徴を抽出し、制作組織を解明して、後藤家の彫金家業の社会的意義を考察した。まず、史料収集に関しては、金工後藤家の本家に当たる後藤四郎兵衛家のご子孫後藤照子氏所蔵史料、ならびに京後藤家において中心的な役割を果たした後藤勘兵家ご子孫の後藤数馬氏所蔵史料の調査・翻刻を行い、さらに、東京大学史料編纂所に寄贈されている史料と寄託されている史料の解読、翻刻、分析を続けた。とくに、東京大学史料編纂所寄贈史料の調査の過程で、あらたに317点の史料を発見したので、本研究の計画外ではあったが、それらの史料の解読を行った。新発見の史料は、後藤家の本業である彫金のみならず、幕府から命じられた大判座・分銅座の経営に関する史料も含まれていてきわめて貴重である。これらについては解読の作業を終了し、全点の目録を作成した。ついで、彫金作品の調査に関しては、東京国立博物館からの助言を得て、目貫・小柄・笄をはじめとする伝来語作品の調査と目録化を進めた。作品はデジタルカメラにより高精細の撮影を行い、全体図・部分拡大図を磁気媒体に格納した。そして、翻刻した史料と諸作品とを対照させることによって、金工後藤家の作品の流通・分布状況や伝来状況を整理した。なお、本研究の成果を、東京大学史料編纂所主催による史料学セミナーにおいて「後藤四郎兵衛家の三家業」と題して講演した(平成14年11月2日)。また、東京国立博物館において開催された「大日連展」(平成1月5日〜2月23日)に対して、後藤家と縁の深い日蓮宗不受不施派の日奥上人関連史料の出陳に協力した。
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