研究課題
基盤研究(C)
元代における文人文化の普及について、朱朝滅亡後の古都杭州の知識人たちの文化的活動、交流を、現存の絵画やその跋文から探った。特に2001年には西湖図巻(上海博物館)とそこに付された元の杭州の文人たちの跋から、その作品が元の文人の交流の中で果たした役割について考察し、実景山水画が、宋以来の文人の文化活動の場において果たしていた役割について、新たな知見を示した(「上海博物館蔵『西湖図』巻と北京故宮博物院蔵『西湖草堂図』巻について」『実践女子大学 美学美術史学』16、2001)が、その後、さらに多岐にわたり、実景山水を含む山水画の主題や点景に表れた文人的価値観の表出と受容の関係について考察し、現在印刷中の単行本の一部としてまとめた(『山水への憧憬、花鳥の慶び-中国絵画を読み解く』角川叢書 印刷中)。その過程で、特に奇石とその愛好に表れた文人的美意識について、山水画、庭園とも連関する新たな研究の方向が展望された。日本に関しては、室町時代から江戸時代の初めにかけての、喫茶・立花の文化史的な位置付けに関して、中国の文人によって培われた価値観の波及という観点から考察し、目下論文作成に向けて資料収集を進めている。なお、「四季草花・蔬菜図屏風」(『國華』1278、2002、4)では、特に蔬菜モチーフに焦点を当て、宗達及び宗達派の絵師たちが、明代の文人たちが手がけた花卉雑画巻等から示唆を受けた可能性、及び伊藤若冲の野菜図と明清代の花卉雑画巻との関係などを示唆した。その問題についての本格的な研究が今後の課題として残っている。
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國華 1278号
ページ: 16-19
No.1278
実践女子大学 美学美術史学 16号
ページ: 63-82
Atheistic and Art History ; Bulletin of Jissen Women's University Department of Aesthetics and Art History 37