被験者の性格要因・年齢・性別等の個人差が報酬の価値割引率に及ぼす効果に関する実験を行った。被験者は、医学部学生のグループ(医学専攻学生、看護学専攻学生)、及び、社会人学生のグループ(放送大学学生)であった。加えて、選択行動を行っているときの脳内の血流量の変化を光トポグラフィーにより測定するための予備実験も行った。 性格特性の実験では、報酬の時間割引テスト、および、認知的熟慮性尺度、時間的展望尺度、及び、Locus of Control尺度という3つの性格検査が配布され、それぞれに対して被験者が回答した。 実験の結果、以下の傾向が見いだされた。a.女性よりも、男性の方が、より割り引く b.報酬金額が小さいほど、割り引く c.放送大学の学生よりも、旭川医科大学の学生の方が、より割り引く d.男性よりも、女性の方が、時間的展望傾向が大きい e.看護学科の学生では、時間的展望と割引率の間に弱い相関が見られた。 f.放送大学の学生よりも、旭川医科大学の学生の方が、LOCが高い g.医学科や放送大学の学生よりも、看護学科の学生の方が、熟慮性が低い h.時間割引に関与すると考えられる注意集中過程には頭頂葉が関与している i.時間割引に関係する衝動的反応の抑制には、前頭葉が関与している j.NIRSはこれらの研究に使用可能である。 以上のことから、時間割引等の衝動性には、いくつかの個人差要因が関与していることが解明された。今後はこれらのデータに基づいて、臨床場面への応用研究を予定している。
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