鳥類(ハト)における刺激特性の階層的結合について多角的な観点から検討した。 1.記憶過程における特性結合:形と色と運動からなる複合刺激を用いて、垂直運動なら形弁別を要求し、水平運動なら色弁別を要求する課題を用いた。2つの運動方向が形または色次元のそれぞれと結合して処理され、運動方向を手がかりとする選択的記憶が明らかにされた。 2.運動の同異弁別:8個のアイコンが同一方向に運動するSAME刺激とそれらが異なった方向に運動するDIFFERENT刺激の弁別課題において、個々のアイコン間の相対的な運動のみならず、「共通運命」のゲシタルト法則に従うSAME刺激の全体的パターンが手がかりとして用いられることが明らかになった。 3.視点に不変な認知:奥行き方向に回転運動する人の顔画像を用いた弁別訓練が静止画のView-Point Invarianceを促進しなかったことから、2次元的画像が3次元的には統合されないことが示唆された。 4.画像認知における階層的特性:漫画の人物のカテゴリー弁別において、全体、コンポーネント、コンポーネントを構成する微細な線や角などのエレメントなど、ハトは複数の階層的手がかりを用いることが明らかにされた。 5.カテゴリー特性の統合:ヒトの顔の合成画から作成したカテゴリーの典型性が高い事例と低い事例の弁別を訓練した結果、新奇な事例にカテゴリー典型性に従った反応率が生じた。また、相互に特性を共有しない周辺事例の間に機能的に等価な関係が成立し、カテゴリーレベルにおける特性統合が行われることが示された。 これらの結果から、知覚や記憶の初期過程においてはヒトと同様の階層的結合がハトにおいても行われているが、2次元ビデオ画像の3次元的統合は行われないことが示された。
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