デジタル加工によって作り出された一部のみが異なる2つのアニメーション映像を兼松ら(1996)の方法によって提示し、群衆(10人以上)の中で一人あるいは数人が違う場面を目撃するというような状況を実験的に作り出すこと、そして、そうした場合に目撃者がどのような証言をするのか、その記憶はどう変容するのかを実験心理学的に分析することを目的とした。 1.デジタル映像の作成 兼松・守・守(1996)の実験に用いられた架空の犯罪場面(クルマに乗った2人組が、歩行者に道を尋ねるフリをして、歩行者の持ち物を置き引きする)をアニメーションで再現し、その一部を加工して同じ事件についての2種類の異なる映像を作った。この一部を加工して作った2種類の映像を同じスクリーンにビデオプロジェクタで同時に提示し、上記映像を偏光サングラスをかけて見た際に、一方の映像だけが見えるようになることを確認した。 2.先行研究のアニメ画像による追試 部分的に違いが挿入されたデジタル映像を用いた兼松・守・守(1996)実験の再現実験を行った。被験者55名を2名ずつまたは3名ずつの2つの条件下でアニメーションを見せた。アニメーションを見せた後、個々に報告者を作成させ、さらに内容についてグループで討議させ共同で1つの報告書を作成させた。アニメーション提示から1週間後に再び個々の報告書を作成させ、記憶の変容を調べた。 3.成果の発表 研究成果はMori et al.(2002) Manipulation of Overlapping Rivalrous Images by Polarizing Filters:A New Technique for Experimental Research in Memory Distortion of Eyewitnessesとして筑波国際記憶学会で発表された。
|