1)幼児はロボットの誤信念をどう判断するか 4歳から6歳の保育園児を被験児とした。被験児は年少群(平均4.5ヶ月)と年長群(平均6ヶ月)に分けられた。誤信念課題用の刺激として、a)自律移動型のロボットが2つの箱のうち一方におもちゃを隠し、それを見ていた別の人がおもちゃを入れ替え、その後ロボットが戻ってくる場面と、b)ロボットの代わりに人が同じことを演じる場面、の2種類を用いた。被験児は個別にこれらの刺激ビデオを見せられ、いくつか質問が与えられた。結果を概略すると、年長群と年少群では、いずれの条件においても、記憶質問(どこにおもちゃが入っていたかを問う)では差がなかったが、予測質問(どちらを探すかを問う)および表象質問(ビデオに出てくるエージェントはどちらにおもちゃが入っていると思っているかを問う)では、いずれも年長群のほうが優位に成績が良かった。ロボット条件と人間条件では目立った差が見られなかったものの、表象質問は、人間条件でより正答が多い傾向が認められた。すなわち、行動の予測(どちらの箱を探すか)はロボットでも人間でも可能であるが、「思う」といったような心的動詞はロボットには提供しない可能性を示唆する。人の心の成り立ちを検討する上で大変興味深い結果である。 2)スケールモデルを用いたシンボル理解の発達 2歳から3歳の保育園児を対象とした。スケールモデル課題とは、実際の部屋にいくつか家具などの物体を置いた場所にターゲットのおもちゃを隠しそれを被験児に探させる課題である。その際に手がかりとなるのは、その部屋と置かれた家具などのミニチュアモデルで、実際の部屋に対応するスケールモデルにおもちゃを隠す場面を見せる。すなわち、この課題を解決するには、部屋とスケールモデルの完全なマッピングとスケールモデルが実際の部屋のシンボル表象としての理解が必要となる。シンボルとそれにより指示される二重表象に到達することがポイントなるということである。本実験では、この二重表象に着目し、それに到達しやすいとされる単純な幾何学物体を使用して実験をおこなった。被験児を年少群と年長群の2群に分け、それぞれの群を、統制群と実験群に分けた。統制群は、従来の実験と同様に隠し場所となる物体を家具など比較的複雑なもの、また実験群は、隠し場所となる物体を単純な幾何学物体にした条件でテストを受けた。結果を概略する。まず、年長群と年少群では、有意に年長群のほうの正答数が多かった。しかしながら、統制条件と実験条件の差は有意とはならなかった。しかし、被験者数の問題等もあり、今後さらなる検討をおこなう。
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