研究概要 |
3週齢という幼若時にラットの右側皮質視覚野を破壊し、3ヶ月に達するまで育て、その後白黒弁別学習を課すと出生時に右眼を摘出されたラット(OEB)も3ヶ月齢で右眼を摘出されたラッ卜(OET)も300試行以内で学習できた。これは左眼から左側皮質視覚野に到る視覚系が補償的に機能したと考えられる。幼若時に視覚野を破壊されることにより神経栄養因子が放出され、このような補償効果が生じるとわれわれは考えた。しかし、視覚野破壊後に明環境で育つため、強制的に微弱な同側視覚系が強められるのだとの反論があった。この反論を検証するため、平成13,14年度は視覚野破壊後、ラットを暗環境で育て、祝覚を使わせないようにした。そして白黒弁別課題を課した。その結果、OEBもOETも以前の結果と同じように課題獲得に成功した。しかし、同側視覚野の役割を確かめるため左側皮質視覚野を破壊して同じ課題を与えたところすぐに課題を獲得できた。この原因を探したところ、右側皮質の残った部位が機能していることが分かった。それゆえ平成15年度は3週齢で右側皮質の破壊範囲を広げ、右側皮質が補償的に機能できないようにした。その結果は、OEB、OETともこれまでと同じように課題の学習に成功した。左側祝覚野破壊後の再学習課題では学習できなかった。このことは神経栄養因子が残った微弱な伺側視覚系の機能を補償的に高める働きを担っていることを示唆するものである。
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