研究概要 |
研究の状況:本年度の目標は(1)、面接法のガイドライン案の作成と(2)面接法の比較実験であった。そこで,まず,イギリス内務省が作成したフェーズドアプローチ(ラポールの形成,自由ナラティブ,質問,クロージングの4フェーズから成る)を参考に,暫定的なガイドラインを作成した[著書「対話の理解」に関連研究を掲載]。また,この「自由ナラティブを中心とした面接法」(ナラティブ面接法)と従来の「質問を中心とした面接法」(質問面接法)の比較を行った。方法は以下のようなものであった。ある女性が幼稚園を訪れて園児とゲームを行う。その1週間後,別の女性が幼児に面接を行い,何が起きたかを聞き出す。参加した園児は26名。彼らを2群に分け,ナラティブ面接法か質問面接法のいずれかの方法で面接を行った。その結果,質問面接法の方が産出された全体的情報量は多かった。しかし,正確な情報はナラティブ面接法での方が多かった[分析・執筆中]。この実験では,概ね予想された通りの結果が得られた。しかし,同時に,幼児からより多く情報を引き出すには,質問の種類だけでなく,間(ま)やあいづち等のパラ言語的な測度も重要であることが示唆された。そこで,パイロット的に3人分の対話を事例としてとりあげ,間,あいづち,質問と応答の関連を検討した。その結果,間が十分とられていないこと(0〜2秒。英国のガイドラインでは10秒待つことが望ましいとされる),あいづちが多いことが示唆された[「幼児への面接(1),(2),(3)」として発表]。 その他の執筆活動:昨年度実施した(1)母子による出来事の想起をめぐる対話の分析と(2)面接の事例研究を公表した[「中国人親子による出来事の対話」「自己は記憶によってつくられる」「Child interview」]。また,面接においては顔の同定が行われることも多い。この観点から,すでに得ていた資料(3)を分析し公表した[「The effect of repeated photo identification」「顔の再認」]。
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