研究概要 |
本研究の目的は、心理物理学的方法論をスポーツに応用し、(1)優秀なスポーツ選手の感覚機能と認知情報処理の解明、(2)審判の判定の正確さとバイアスの定量的評価、に関する基礎的研究を行うことである。 本年度は主に空手道選手の視覚情報処理について実験的に検討した。刺激としては、空手道選手の技をデジタルビデオカメラ(ソニーDCR-TRV30)で録画した画像を用いた。その画像をパーソナルコンピューター(SONY PCG-R505/ABW)の画像編集ソフトで加工し、カラーグラフィックシステムを用いて高解像度ディスプレイ(TOTOKU CV722X)に呈示した。空手道選手の画像が実物大に映るようディスプレイの観察距離を調整し、被験者の頭部をアゴ台(竹井機器TKK-930a)で固定した。また、色彩輝度計(トプコンBM-7)により画像の色度と輝度を測定し、画質を調整した。被験者の課題は、呈示画像の技が上段あるいは中段に来るかを出来る限り速く判断し、反応ボックス(Cambridge Research Systems CB3、BNC Break-out Box)上のキー押しで反応することであった。対照条件として、画像が呈示されたら反応する条件(単純反応時間)と円刺激をディスプレイの上下に呈示する条件(弁別反応時間)を行った。被験者には、空手有段者と未経験者を用いた。これまで得られた実験結果によれば、技の判断は有段者の方が速いが、単純反応時間や弁別反応時間には未経験者との相違は見られなかった。 以上の成果についてはスポーツ心理学会で発表し、論文にまとめて投稿中である(Mori, Ohtani, & Imanaka, under revision)。また、反応時間や視覚情報処理の解析に関する基礎的研究も平行して行い、日本心理学会と日本視覚学会で発表した。
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