研究概要 |
本研究の目的は、心理物理学的方法論をスポーツに応用し、(1)優秀なスポーツ選手の感覚機能と認知情報処理の解明、(2)審判の判定の正確さとバイアスの定量的評価、に関する基礎的研究を行うことである。 本年度は主に空手道選手の視覚情報処理、特に注視の維持について実験的に検討した。刺激は、視野中を左から右へ水平に移動する小円であり、垂直方向に上昇あるいは加工するランダムドット背景に重ね合わせて呈示された。刺激と背景はパーソナルコンピュータとカラーグラフィックシステムで作成され、プロジェクター(シャープ・XV-Z9000)で200×200cmのスクリーン上に映写された。ターゲットが消えると同時に背景も消え、代わりにカーソルが呈示された。被験者は手許のマウスを用いてカーソルを動かし、ターゲットの運動軌跡が最も曲がったと思われる位置を指示した。水平からこの位置までの距離が誘導運動錯視量であり、垂直方向に背景が動く際の注視の維持能力の機能的指標とした。被験者は空手道選手11名と、空手道の訓練経験のない一般人11名であった。その結果、一般人と比べ、空手道選手の錯視量は大きい傾向にあり、個人内分散も小さかった。以上より、空手道選手と一般人には注視機能に相違があることが示唆された。 以上の成果については、電子情報通信学会HIP研究会(仙台市、平成14年12月)で発表した(瀬谷・森,2002,信学技法)。また前年度の成果については日本心理学会で発表し(東広島市、平成14年9月)、論文も掲載された(Mori, Imanaka, & Ohtani, 2002)。また本研究に関わる基礎的研究については大谷が学会発表をするとともに(仙台市、平成14年6月)、論文も掲載された(Ishihara, Imanaka, & Mori, 2002 ; Ohtani & Mori, 2002)。
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