研究概要 |
本研究の目的は、心理物理学的方法論をスポーツに応用し、(1)優秀なスポーツ選手の感覚機能と認知情報処理の解明、(2)審判の判定の正確さとバイアスの定量的評価、に関する基礎的研究を行うことである。 本年度は空手道選手の注視の維持(前年度からの継続)と視標追従中の反応時間について実験的に検討した。注視の維持の実験では、刺激は視野中を水平に移動する小円であり、垂直方向に上昇あるいは下降するランダムドット背景に重ね合わせて呈示された。被験者は手元のマウスを用いてカーソルを動かし、ターゲットの運動軌跡が最も曲がったと思われる位置を指示した。水平からこの位置までの距離が誘導運動錯視量であり、垂直方向に背景が動く際の注視の維持能力の機能的指標とした。その結果、空手道選手の錯視量は一般人と比べて有意に大きく、空手道選手は注視の維持に優れていることが示唆された。反応時間の実験では、視野中央を水平に往復運動する視標を追従しながら、その上下に呈示される刺激への単純反応時間と弁別反応時間を測定した。その結果、空手道選手の方が一般人よりも反応時間が速い傾向にあり、また両者において視標追従速度が速くなるほど反応時間は遅くなった。 以上を含めた3年間の研究の成果については、日本心理学会(東京、平成15年9月)、Annual Meeting of the Psychonomic Society(バンクーバー、平成15年11月)、日本スポーツ心理学会(つくば市、平成15年12月)、電子情報通信学会HIP研究会(仙台市、平成15年12月)で発表し、研究成果報告書にまとめた。また、関連研究の論文及び著書が印刷中である(森,2004;Mori & Kataoka,2004)。
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