研究課題/領域番号 |
13610096
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
竹下 秀子 滋賀県立大学, 人間文化学部, 助教授 (90179630)
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研究分担者 |
高谷 理恵子 福島大学, 教育学部, 助教授 (90322007)
多賀 厳太郎 東京大学, 大学院・教育学研究科, 講師 (00272477)
小西 行郎 東京女子医科大学, 乳児行動発達学講座, 教授 (40135588)
板倉 昭二 京都大学, 大学院・文学研究科, 助教授 (50211735)
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キーワード | 大型類人猿 / チンパンジー / 運動発達 / ジェネラルムーブメント / 姿勢反応 / 母子相互交渉 / 泣き |
研究概要 |
本研究では、ヒトとチンパンジーを対象として、新生児期からの姿勢運動発達を、ジェネラルムーブメント(自発運動)、姿勢反応などによって評価し、それらと母子間の姿勢運動的相互交渉(母親の抱きと乳児のしがみつきなどの姿勢運動的相互関係)、対象操作的相互交渉(物体をとりいれたときの身体運動的相互関係)、および対面的相互交渉(表情や発声による相互関係)との関連を明らかにするための縦断的な行動観察を実施した。さらに、母子の生理的相互交渉についても、チンパンジー乳児の生後3か月の吸乳行動を新たに分析した。吸乳持続時間は、対象の3個体とも月齢を伴っても変化はなく、3分から5分間かけて吸乳していることが多い。また、吸乳間間隔は、月齢にともなった変化よりも、授乳拒否にあった個体と他の個体との差が明らかになった。また、チンパンジー乳児の「泣き(cry)」の行動について、どのような場面で起こり、また母親はどのような対処行動をおこなうのかを分析した。その結果、チンパンジー乳児の「泣き」はほとんど母親の姿勢変化などの行動が原因で生起していることがわかった。また、母親の行動としては、乳児の「泣き」に対して「抱く(embrace)」行動が最も高い割合で生起し、80%近くを占めていた。ヒトの乳児のようにその後授乳へ移行したりすることはほとんどなく、「抱く」と泣き止んでいた。このことは、チンパンジーの母子間における初期のコミュニケーション行動が乳児の側からの母親の行動調整を含むものであるものの、姿勢運動的相互交渉がその中心であることを示している。
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