両眼視差を利用したホイートストン型実体鏡を用いて、両眼立体視を成立させる上で事態を制約する条件についていくつかの検討を行った。 先ず刺激を瞬間提示する時間条件をとりあげた。またそれに当たっては、提示の繰り返しの効果および先行する練習試行の効果も同時に検討したが、個人差に著しいものがある。これらの条件は、今後の実験を進める上での基礎的な測定条件を吟味する上でも欠かせないものであり、今後も検討を続けてゆく。なお、このような瞬間提示・繰り返し提示の効果に関して、先に順応/残効の枠組みで得られた結果を国際精神物理学会において発表し、両眼立体視の成立条件との関連を考察している。 次に左右の視野の不斉一という条件について、画像の輝度を変えて立体視成立の度合いを検討する実験をはじめた。これは白内障などの疾患のシミュレーションであり、現在データ収集中である。これに続けて、コントラストや色味についても左右の不斉一の条件として検討してゆく予定であるが、当初に使用した装置では画面の大きさや角度の調節などに不十分な点が生じてきたので、モニターを交換するなどして若干の改良を加えている。こうした装置や方法手続きについては、通信放送機構などから有益な情報をいただいた。 次年度の課題として、視野の不斉一の条件について実験を加えるとともに、白内障や黄斑変性症などの疾患を伴った場合についてのデータを収集し、健常者でのシミュレーションの結果と比較検討したい。
|