研究概要 |
NICUにおいてカンガルーケアを体験した極低出生体重児とその母親(カンガルーケア実施群:以後KC群と呼ぶ)、体験しなかった極低出生体重児とその母親(対照群)の行動を、修正年齢1歳半の定期検診の発達検査場面でVTRに記録し、サンプリング間隔5秒のワンゼロサンプリング法を用いて定量的な分析を行った。現時点でKC群18例対照群39例のサンプルが得られており、そのうち、KC群11組と対照群18組について予備的分析を行った。その結果、KC群は対照群に比べ、検査場面で激しい泣きが少なく、発声や微笑みを多く示し(P=0.05、P=0.1)、一方、母親に関しては、笑いや児への語りかけが多く(P<0.05,P<0.1)、語りかけの内容は、共鳴・共感の発話が多く(P<0.05)、否定・疑問の発話が少ない(P<0.05)などの特徴が見られた。母親の行動指標を用いて判別分析を行ったところ、分類の正答率は全体で92%に達し、行動上からカンガルーケアの効果が判別可能であることが示された。カンガルーケアは、赤ちゃんを母親の裸の胸に抱いて皮膚と皮膚を接触させる育児方法で、濃密な母子接触により、極低出生体重児の生存率を高め、養育遺棄を減らす効果があると言われている。本研究の結果はNICUにおけるカンガルーケアの体験が、1歳半の時点での母子関係を促進する効果があることを実証的に示すものとして注目に値する。本研究の結果は、生後初期のカンガルーケアが、母親の受容的・共感的な応答性を高めることにより、安定した母子の愛着形成に寄与する可能性を示唆するものと考える。なお、予め文書にて保護者に研究の目的と方法について説明し、協力を依頼して、保護者の同意が得られた場合にのみ観察を行った。観察にはSONYのビデオカメラを用い、画像をパソコンにとりこんで編集し、データ分析にSTATISTICA(統計ソフト)を用いた。
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