研究概要 |
本研究の目的は,幼児期における知覚・運動システムと表象・操作システムの相互作用の様子を,空間定位課題をとおして描き出し,これまで別個に研究されてきた2つのシステムを関連づけることである。具体的には,杉村(1996,1999,2000)が空間定位課題において見いだした,突然反対側を指さすという現象の条件分析を組織的に行うことにより,知覚・運動システムと表象・操作システムの発達的関係を明らかにする。そのために,平成13年度は,主としてテーブルの対称性が空間定位におよぼす影響を検討した。 杉村(1996,1999,2000)が用いたのは長方形のテーブルであり,180度回転すると回転前と見えが同じになる。180度で突然反対側を指さす現象が,見えが同じになることにより生じたかどうかを検討するために,以前実施した,台形のテーブルの結果を再分析するとともに,新たに,円形と正方形のテーブルを用いた場合のデータを取り,長方形の場合と同様の現象が生じるかを確認した。その結果,長方形以外のテーブルにおいても、徐々にズレていく連続的な誤りと,ある角度で突然に異なる象限に移動する非連続的な誤りが見いだされた。 以上の結果から,3,4歳の子どもは,対象の位置を内的な枠組みにより符号化し,形成した表象に何らかの操作を行っているために,非連続的な誤りが出現すると考え,さらに,分節度という概念を導入することにより,空間定位課題における符号化と操作の発達的な変化を整理した。
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