今年度は、地域における学校不適応に対する具体的な支援プログラムの構築に研究の主力を注いだ。まず、解決志向アプローチの有効性について、主にスクールカウンセリングの立場から実践的に活用し、その検証を行った。その結果、不登校、保健室登校の児童生徒に対して、また怠学傾向、非行系の生徒に対して、さらには自傷行為、心身症的症状を抱える児童生徒に対して、及び関係保護者に対しても、クライエントをエンパワーする心理的援助の方法として非常に有効であることが確認された。 つぎに、地域の心理教育的支援の拠点として、教育臨床相談支援室の設立の準備をすすめ、地域における力量をもったカウンセラーの育成のための研彦を行う一方で、研究代表者自ら地域に開かれた心理教育臨床的相談支援活動を実践し、来年度4月からの相談支援室の設立を現実のものとした。 上述の、高度に専門的知識・技能を備えたカウンセラーによる心理教育的相談支援活動と合わせて、カウンセリングマインドをもち、基本的な対人援助スキルを学んだ大学生に対して働きかけを行い、ピアヘルパーを養成してピアヘルピングの視点からも地域の児童生徒に役に立つ援助を提供できる環境づくりを手がけた。さらに、試験的に非行系で不登校傾向のある中学生徒に対してピアヘルパーによる支援を実践し、現在まで約3ヶ月の実践により相当程度の成果を挙げている(チーム支援)。 先の教育臨床相談支援室の設立とピアヘルパーの養成とその組織化により、強力な地域支援ネットワークの核ができつつあることは高く評価できよう。 最後に、現場の教師に対するサポートの一手段として、PTA研修型の構成的グループエンカウンターによる可能性を探り、人間関係・自尊感情に対して検証可能な形で効果が現われることを示した。
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