平成16年度4月から、旭川キャンパスにおいて、北海道教育大学教育実践総合センター附属の教育相談室分室(通称:旭川心理臨床・教育相談支援室)を立ち上げ、久能弘道(相談員主任)を中心に、同大学院修了生を相談員、同大学院生を実習生として加えたメンバーによる、地域の児童生徒及び保護者を主な対象者とする心理臨床、教育相談活動が展開した。現在までのところ、自傷行為、不登校・引きこもり、犯罪被害・加害少年、虐待児童、さらに発達障害を抱えた児童及びその保護者等への心理臨床的、教育相談的支援が行われてきている。 従来、地域においてこのような心理臨床的、教育相談的支援を高度な専門性を備えつつ、なおかつ独自の裁量をもって、クライエントのニーズにあわせて実際にクライエントの役に立つ支援を柔軟に行える機関は存在しなかった。解決志向アプローチとピアヘルパーの導入による効果的な支援を行う、この相談室への需要は今後ますます増大することは疑いの余地がない。また、地域においてこのような支援に関われる人材の育成が主要な課題ともなっているが、本相談室においては地域のクライエントの支援を行うと共に、それに携わる相談員の育成にも大きな力を注いできた。上述の観点からも、本相談室は、不登校、非行、虐待、発達障害等の現在の教育上重要な課題と密接な関係をもつケースに対応しつつ、現在の学校教育現場が抱えている、児童生徒に関わる多くの問題への支援を行うとともに、心理臨床・教育相談に関わる高度な専門性を有する地域における人材育成を並行して行い、地域における具体的支援プログラムを提供できる心理臨床・教育相談の拠点として機能し始めてきたといえよう。今後ますます、大学、教育現場、地域の子ども・保護者という3者の連携システムのモデル構築としてもさらなる発展が期待される。大学の地域貢献が重要視される現状において、地域の児童生徒・保護者、学校関係者といった利用者のニーズに的確に応えていける大学施設の存在意義は非常に大きい。
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