研究概要 |
痴呆性高齢者に対するケアに関しては、杜会福祉学を中心に多様な論議がなされてきたが、個人差に主眼をおいた心理学的なアプローチを加味した研究はきわめて少ない。本研究は、層理論を基盤とするパーソナリティ心理学的な視点から、痴呆性高齢者の個人差を、特に感情傾向に焦点を当てながら分類・把握し、個人差を考慮に入れたケアの体系化を図ることを目的としている。 本年度はまず、分析の基盤となる痴呆性高齢者の感情分析カテゴリの検討を行った。グループホームに居住する5名の痴呆性高齢者を対象に、ERIC(Emotional Response in Care)評定法(Fleming, 1999)に基づき、感情分析カテゴリの妥当性に関する予備調査を行ったうえで、本調査として、21名の痴呆性高齢者を対象とした感情カテゴリの検討を行った。その結果、痴呆性高齢者の表出感情が、意欲、親しみ、喜び、満足、表現性等のサブカテゴリから構成されるポジティブ感情、退屈、不満、嫌悪、悲しみ、怒り、不安等のサブカテゴリから構成されるネガティブ感情、戸惑い、恥じらい、驚き、没入等のニュートラルな感情の3群に大別されることが明らかになった。 引き続き、東北地方にある2つの施設において、介護担当者58名を対象に、パーソナリティ的な側面から捉えた痴呆性高齢者のタイプ分けや、それぞれのタイプに特有な感情や行動、また作成された感情カテゴリヘのあてはまりに関する質問等を中心とする調査研究を行った。その結果、痴呆性高齢者のパーソナリティは、おおむね、協調型、易感型、内閉型、攻撃型という4つのタイプに分けられること、また、それぞれのタイプの基層として特有な感情傾向がみられることが示唆された。
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