1)焦点地域(宮城県黒川郡大和町・人口約2万4千人)において、(1)1歳半〜2歳半と(2)4歳を第一子にもつ全ての母親を対象に、町内に存在する育児に関する潜在資源(周知状況)と活用資源(活用状況)の全数調査を行なった。その結果、低年齢群は高年齢群に比べて、周知・活用のいずれについても少なく、また、町の中心部から離れた資源についての周知・活用度が低かった。就園前の低年齢児をもつ母親は、地域内での育児行動空間が狭く、資源への接近が少ないことが示された(東北心理学会第55回大会、日本発達心理学会第13回大会)。2)同町に住む母親を対象に、第子が0歳から4歳になるまでの5年間にわたって行なわれてきた、養育意識・行動の縦断的全数調査データを分析、考察した。その結果2、3歳へ向けて、肯定的育児感は有意に減少し、否定的育児行動は有意に増加していた(小児保健研究)。1)と2)により、1歳半健診と3歳半健診の狭間を補う積極的な、地域型育児支援の必要性が示された。これらの結果は、同町の母子保健計画策定会議での報告、平成14年度大和町母子保健計画への資料掲載により、地域保健事業にフィードバックされた。3)このような育児初期の危機的時期に対応しうる育児支援プログラムとして、子ども年齢にかかわらず利用できる、同町の「子育て相談教室」を焦点化し、その概要と課題についての実践報告を行なった(小児保健学会第48回大会)4)「子育て相談教室」の過去3カ年の利用実態についての過去記録から、全利用者データの分類整理を行なった。(このデータ分析を通した利用趨勢の考察は次年度の課題とし、支援事業効果研究に向けた基礎的資料とする予定)。5)研究代表者は、この「子育て相談教室」をはじめとする当該地域の育児支援事業に、発達相談・育児相談員として参与することにより、地域住民との関わりと研究成果のフィードバックを続けている。
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