本研究の対象地域、宮城県黒川郡大和町(人口2万4千人)において行われている「子育て相談教室」を利用していない母親(以下、「非利用者」)に対する質問紙調査を行い、先に実施した利用者調査と同等数分を回収し、利用者調査とともに分析検討を行った。その結果、利用者の利用行動は「知識・情報としての利用」と「居場所としての利用」の2因子からなり、いずれの因子も利用満足感の高さに寄与していた。さらに利用者は、相談後に身近な人たちと「子育て相談教室」での子どもの様子を話題にしており、本事業の直接的援助効果とともに、母親を通じた周囲の人々への働きかけという間接的援助効果が示唆された。また「子育て相談教室」の利用者は、非利用者に比べて、「居住歴が浅い」、「第一子が年少児」、「身近なサポートが少ない」、「子どもを扱いにくい」と感じている母親が多いことから、よりリスクの高い集団に利用されている可能性が推察され、概ね良好な成果を上げていることが示唆された。しかし反面、非利用者は、利用への希望が認められるにもかかわらず、利用者に比べて有職者や会場から離れた地区の母親が多く、生態学的な「accessibility」向上への配慮の余地が残された。また利用者の自由記述からは、開催時間(幼稚園や保育所の送迎の時間と重なる、自家用車がない、家事など朝の忙しさと重なる等)や参加者の雰囲気などの面で利用しにくさが明らかとなり、時間の調整を行い、場面の緊張をほぐす介入も開始された。総じて、利用者と支援プログラムを適合させる配慮としては、個人の内的水準から地域生態学的水準に至る多角的な視点からの配慮が必要であると考察される。本年度結果は第57回東北心理学会、第50回小児保健学会にて報告し、地域保健センターの行う育児支援の可能性と限界、資源と利用を繋ぐインターフェイスとしての援助機能の必要性をまとめた(児童青年精神医学とその近接領域44、No2)
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