本研究は、生活世界の広がりとともに児童期後期から本格化する、発話状況や話者の立場に応じて使い分ける社会的なことば(レジスター)の発達過程を明らかにし、児童期後期から青年期を視野に入れた、生涯発達的な言語発達モデルの構築を目標にする。本研究は、児童期後期から青年期にかけて展開する、言語の社会的使用能力の発達過程を研究対象とする。具体的には以下の3側面を明らかにして児童期後期からの言語発達モデルの構築を行った。なお、本研究ではとくに方言使用地域の児童および青年を取り上げる。その理由は方言と共通語がレジスターの変異であり、言語の社会的使用の発達過程を鮮明化できると考えたからである (1)児童期から青年期までのレジスターの多様化に関する質問紙調査 児童期後期以降の発達の概略を知るために、山形県庄内地方の小学3年、5年、中学1年、3年、高校1年、青年の各100名を対象とした言語発達に関する質問紙調査を行った。場面想定によるレジスター交替に関する項目、言語発達の節目に関する項目、聞きなれない方言との出会いに関する項目、方言と共通語の好悪の差などに関する項目を用いた。 (2)日常の言語使用における児童および青年のレジスターの多様化と交替に関する談話分析 すでに小学生に関する自然談話資料は充実しているので、同じく山形県庄内地方の中学生の談話資料を収集する。中学生の授業中および、部活動時の談話資料を収集し文字化して分析し、方言と共通語レジスターの交替過程を明らかにする。すでに収集済みの児童の資料と比較を行う。 (3)児童期から青年期におけるレジスター使用に関するナラティブの収集と分析 半構造的な面接調査を、同じ年齢段階5名ずつに実施し、言語に関するよりビビッドな言説(語り)を収集した。
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