アルコール依存症(以下アル症)患者の初期治療において最も大きな障壁となる疾病否認について、本年度はその端緒となる調査とを行った。具体的には、研究方法の確定を行うために、現在断酒しているアル症者約150名を対象に、否認時と疾病を認識した後とでの性格・行動の変容について遡及的調査を実施した。調査は特にリスクテイキング行動特性に焦点を当てたもので、回収・分析の結果、一様にリスクテイキング行動特性が減じていることが確認できた。これは海外の先行研究と同じ方向性を持つ結果であり、研究方法として、遡及的研究も妥当性を持つことが明らかとなった。本研究課題は現実的問題として、現在病気を否認している潜在患者に対しての調査が不可能な点が一つの障壁であったが、方法論的な問題について、一つの可能性が示された。来年度は、同一の方法とアル症患者の家族(配偶者・親)への評定法調査を含めて、否認そのものについて調査を実施する予定である。また本年度の調査結果は筑波大学心身障害学研究に投稿予定である。
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