研究概要 |
前年度までに開発した,発達障害児の認知・言語の獲得を促進するためのコンピュータ支援教育プログラムを,「刺激・反応等価性」の観点から体系化した。開発したプログラムを,ブロードバンド・ネットワークを用いて,家庭や学校に配信し,双方向的な情報交換をもとに評価と指導を行った。 (1)ひらがなの「読み」が困難な3名の発達障害児に,絵に対して単文字を順次選択することで,単語文字が構成され,対応する音声が提示されるコンピュータプログラムを用いて家庭内指導を実施した。その結果,単語構成が学習されただけでなく,ひらがなの単文字の「読み」も学習された。このデータから,コンピュータから提示された文字(視覚刺激)と音声(聴覚刺激)とが「刺激等価」となり,構成反応と読み反応とが「反応等価」となることが明らかになった。 (2)肢体不自由養護学校に,開発したコンピュータプログラムを配信し,2名の脳性マヒ児の書字を改善するための指導を実施した。2名とも,拗音の書字に困難を示していたが,コンピュータプログラムによる文字選択課題を実施することで,直接指導されていないにもかかわらず,適切な書字が可能になった。この結果は,直接指導された文字選択反応と,指導を受けていない書字反応が等価になったことを示している。この結果は,音韻意識が,単語構成などの系列反応をコンピュータを用いて指導することで獲得されることを示している。 これらの研究結果は,分化反応である「読み」「書字」の学習において,「刺激・反応等価性」を用いたコンピュータ教材を実施することで,子どもに負担を与えずに,学習が大きく促進されることを示している。また,短い時間でも毎日の一定時間の指導が,認知・言語の発達促進のためには,最も効果があることがわかった。
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