学校現場における子どもたちの間題が深刻化するのと並行して、教師の精神衛生の悪化が指摘されるようになった。教師のメンタルヘルスについては、実証研究でも臨床実践からも多数の報告があるが、学校現場の「荒れ」と教師の「心身両面の疲れ」との関連を扱った研究は多くない。「子どもたちが見えにくくなった」と言われるが、その「わからなさ」が教師の従来の指導方針を無力に感じさせ、それが教師の疲れの背景にあるとも考えられる。以上のような間題意識を元に、本年度は以下のような実践ならびに研究成果の発表を行った。 1)スクールカウンセラー実践ならびに、教員対象の研修活動の中で得られた教師のバーンアウトの実態と、その背景にある学校現場の間題について考察するとともに、それについてシンポジウムでの話題提供を行った。 2)教師対象の調査を行い、バーンアウトの実態について調査した。さらに、その背景にあると考えられる要因として「子どもの荒れ(問題状況)」を取り上げ、一方、抑制要因として、ソーシャル・サポート要因(職場内・外のサポート関係)、個人的な生活時間(生活時間の実態)について調べた。その結果、教師のバーンアウトの背景に、子どもたちの心の間題の蔓延が関連していることが示唆された。さらに、職場内よりも職場外にサポート関係や相互支援関係(互いに高めあえる仲間関係)を持っている教師のほうがバーンアウトしにくいという実態が明らかになった。以上の結果については、学会ならびにシンポジウムにて報告を行った。
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