研究概要 |
本研究は,(1)聴覚的,音韻的短期記憶に関する評価方法の精緻化;(2)発達障害児を対象とした評価の実施;(3)聴覚的,音韻的短期記憶に困難を有する発達障害児の事例的検討,の3つ下位プロジェクトよりに構成されている。 本年度は,(1)と(2)のプロジェクトを中心にして研究を実施した。 (1)については,行動指標による研究では,健常成人を対象として,短期記憶検査とその他の認知機能検査を実施し,その関連性について検討した。事象関連脳電位を指標とした研究では,聴覚的短期記憶に関連する成分としてミスマッチ陰性成分と後期陽性成分(P3)に注目した。特に,本年度は,オドボール・パラダイムにおけるP3測定の再現性を確認するため,日内反復測定における実験を実施した健常成人を対象として,受動的条件-能動的条件受動的条件のABAデザインによる検査を行った。その結果、受動的条件におけるP3は,被験者内で安定して惹起し,かつ課題経験による影響がきわめて少ないことが明らかになった。P3の高い再現性は,指標としての妥当性を支持するものであり,この指標を中心に今後の検査の開発を進めることにした。 (2)については,音韻的短期記憶に特異的な困難を有する事例を対象に,WISC-III知能検査・K-ABCなどを含む各種認知機能検査を実施し,事例の認知特性について調査した。さらに,音韻的短期記憶の弱さを強い認知機能により補償することを狙った指導を実施し,現在,継続中である。
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