研究概要 |
本研究は,(1)聴覚的,音韻的短期記憶に関する評価方法の精緻化;(2)発達障害児を対象とした評価の実施;(3)聴覚的,音韻的短期記憶に困難を有する発達障害児の事例的検討,の3つ下位プロジェクトよりに構成されている。 本年度は,(1)と(2)のプロジェクトを中心にして研究を実施した。 (1)については,事象関連脳電位を用いた研究では,昨年度に引き続いて後期陽性成分(P3あるいはP300)に注目した実験を実施した。特に,本年度は,オドボール・パラダイムにおいてP3を惹起する要因について分析した。音韻的短期記憶課題における遂行成績の優劣で2群を設定し比較する実験と,課題遂行における実行機能の関与について検討するために実行機能検査遂行成績の優劣で2群を設定して比較する実験を行った。いずれの群比較のおいても,受動的条件下におけるP3には差がみられないことが明らかになった。また実行機能については,能動的条件下におけるP3の振幅に影響を及ぼすことが認められた。本実験の一部については,日本生理心理学会第20回学術大会で発表した。 (2)については,養護学校に在籍する発達障害児を対象として事象関連電位を指標とした検査を実施した。受動的条件・能動的条件のP3成分に及ぼす音韻的短期記憶能力と知能の影響について,それぞれ検討した。研究は継続中であるが,結果の一部をThe 2nd Intenational Conference in commemoration of the centenary of Alexander R. Luriaにおいて発表した。
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