幼児期から青年期までの役割取得能力(思いやり)の発達を促進する教育プログラムとして、VLF(Voices of Love and Freedom)及びSST(Social Skills Training)プログラムを幼稚園から高等学校へ導入され展開された。VLFプログラムについては、幼稚園では教師2名、小学校では14名、中学校、高校では各1名が道徳の時間を用いて実施した。クラスの様子をふまえ、役割取得能力のアセスメント、教師の願いを明確化したうえ、教材の選択や自作資料の開発後、2時間から4時間をかけて実施された。 VLF教育プログラムが子ども達の興味をひきつけることや、ステップ1の教師の自己開示、ステップ2でのパートナーインタビューを経ることによって、ステップ3でのロールプレイでかなり子ども達が積極的に自己表現できるようになることが明らかになった。ロールプレイに導く際の環境設定や、モデリングの用い方、小道具など、年齢に応じてさまざまなアイデアが考案された。特に、日ごろから、思いやりについて意図した教師のかかわりや工夫が、プログラムでのロールプレイへの低抗感を減らすことが示唆された。これらの取り組みは、「VLFによる思いやり育成プログラム」(図書文化)にまとめることができたほか、静岡県教育委員会の参加型人権学習の実践集に、「思いやりの心を育てる教育プログラム」として取り上げられた。さらには、韓国の幼稚園でも関心をもたれ、来年度に実施できるよう計画を練りつつある。 SSTについては、適応指導教室ならびに中学校で、4セッションが実施された。中学校ではトレーニングする群と統制群が設けられ、統計的にも効果の差が認められた。SSTの効果が、行動だけではなく、スキルについての認知的な変化や自尊心などの感情の変化にも影響を与えていることが明らかになった。
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