研究概要 |
大卒就職者の8年目の職場適応に関するデータを収集するために,大学卒業後8年目の男性1人と女性5人の調査協力の承諾が得られ,質問紙と面接による調査を行った。質問紙は,郵送法により,卒業後の進路と職場の状況,職務満足,大学生括と大学時代および卒業後2年目と5年目の職業探索行動または職場適応に関する回想,ライフ・プロジェクトの測定を,自由記述を中心に行なった。また,縦断的データを重ねている時間的展望と自我同一性地位の測定,VPI職業興味検査を実施した。面接調査は,予備調査をふまえて,職場適応の実際の行動,その動機と見通しについて明確にするための質問から構成された。面接記録は筆記されると同時に,テープレコーダーで録音され,文章化された。面接時の職業は,小学校教師3人,会社員1人,学生1人,主婦1人だった。調査時期を一定にしたコホート比較のため,別のコホートで大学卒業後5年目にあたる5人からも承諾が得られ,調査協力者が大卒5年目と同様の調査を実施した。 面接調査の結果から以下のことが示唆された。大卒就職者の8年目からみると,(1)職場では仕事をこなすだけではなく,同僚をサポートしていくことが求められている。(2)時間的展望を検討すると,転勤や職場の天井感,結婚や離婚により人生の節目を迎えている。(3)未婚の場合には,非婚の人生という選択肢も考え始めている。以上から、30歳は社会的な立場によって変化する転換点であることが示唆された。
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