研究概要 |
前年度の調査結果に基づき、とりわけ青年期においてそれまでの比較的単一の価値観とは異なる多様な価値観を背景に親子関係を経験していると考えられる、1970年代に青年期を経過している1960年代生まれのコホートに親世代を設定し、その子との関係性について、検討した。具体的には小学校5年生から中学3年生の児童・生徒及びその保護者を対象として、兵庫県大都市部で種々のでもグラフィック条件を有する地区にある小・中学校で調査を行った。児童・生徒は授業時間を利用し回答を求め、保護者は子が持ち帰った調査票に回答の上、郵送で返送を求めた。多様な家族形態があり、当該調査によって児童,生徒へ心理的負担を生じさせないため、保護者の回答は母親、父親に限定せず、協力者の判断に委ねてところ、母親からの回答が9割は占め、父親からの回答は少なかった(父母以外の保護者からの回答もわずかにあった)。主な結果は以下の通りであった。(1)回答者の分布にも見られるように、多くは母親が子との中心的関係となっており、父親との関係の希薄さは母親、子の双方から示された。(2)親自身の養育態度では、子の主体性を重視し、自分の価値観をあまり押しつけないとしながらも、将来については子の意向とは別に高学歴を求めた。(3)親は子と友だちのような関係を理想としていたが、とくに思春期年齢になると相互理解に不安を示した。(4)他方、小学生までは従来からの養育態度に大きな変化はないが,中学生以降では子の自由を承認する態度と,より規制を強める態度に二分された。(5)また,親子の相互作用では,親の中学生期における親との相互作用経験が,現在の子との相互作用に影響しており,伝統的な上下関係を志向する態度と平等な関係を志向する態度,とりわけ思春期発育を契機に,男らしさ/女らしさを強調する態度とジェンダーにとらわれない態度に二分される傾向があった。
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