研究概要 |
行動後の気持ちと意思決定時の気持ちについて,その内容を同一の当為判断として,両者が人物の特性推論に与える効果を比較した。また,反省の構成要素を再考・自己批判・向上心に分離し,それぞれが人物の特性推論に与える効果を検討した。さらに,謝罪するかどうかに関する情報が人物の特性推論に与える効果を検討した。その結果,行動後の気持ちの効果が大きく,反省のうち,向上心に関する情報が人物の評価の低さを回復し,謝罪することが人物の評価の低さを回復していた。 逸脱行動に対する価値判断について,行動者が逸脱行動の後に謝罪などの向社会的行動をとったか逃避などの非社会的行動をとったか,という情報が及ぼす効果を検討した。その結果,小学校低学年の児童はどのような逸脱行動に対しても謝罪以外の行動をとることは想定しにくいが,高学年になるにつれて逸脱行動の内容との関連で逃避などの行動の出現も容認されるようになることが示された。このことから,謝罪の背後にあるguilt感情と逃避の背後にあるshame感情を,逸脱行動の状況に応じて分化させて理解する過程が,この時期に進行することが示唆された。 親の言動が子どもの価値形成に影響を及ぼすかについて,例話を用いて推論させた大学生の回答と,その回答理由を分析した。その結果,男子大学生においては,親の影響を受けないで,自律的に価値形成を行うと推論する傾向が,女子大学生よりも顕著であることがわかった。このことと,小学5年と大学生において,ともに女子のほうが男子よりも,親の態度を見て価値を継承する傾向が強いこととを合わせて,男女間で親の価値の取り込み過程に関する認知が異なることが示唆された。
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