研究概要 |
「いじめ傍観児の認知的不協和と援助行動の関連について」の実験を平成13年度に実施した. 目的:いじめを傍観している児童に,Festinger(1957)の認知的不協和理論の枠組みを適用し,援助行動を促進することができるか否かを検討することを目的とした. つまり,被害者に(援助すべきであると思いながらも)何らの援助をしないで傍観している児童は,葛藤(認知的不協和))を抱くはずである.傍観児は不快な気分からその葛藤を解決するよう動機づけられ,被害者を援助することで不快感を解消する.特に公的表明をさせ,それに対する過去の矛盾行動を顕在化(不協和を起こす)させ,自己矛盾をを認識させる偽善パラダイム(Aronson,1999)アプローチを用いる. 方法:O国立大学附属小学校6年生男女115名(男60,女55)を対象とした.個人別に意見表明を求め,表明状況をビデオカメラで収録した,実験条件は,向杜会的態度の公的表明の有無(有:人は助け合うべきですか,無:一番好きな科目は何ですか)条件,過去の矛盾の顕在化の有無(有:いじめ遭遇時に助けたか,無:どこの見学に興味を持ちましたか)条件の2×2の被験者間要因計画である.助け合いの公的表明・いじめで助けなかったは偽善条件,助け合い表明無し・いじめで助けなかったは顕在化条件,助け合いの公的表明・いじめ顕在化無しは主唱条件,助け合い表明無し・いじめ顕在化無しは統制群. 結果:偽善条件群は他の条件群に比べ,有意に援助行動傾向(いじめ支援の仲間づくりの集団活動に積極的に参加したい)が高かった.本結果は,今後のいじめへのピアサポートプログラム開発に偽善パラダイムを用いる有効性を示唆した. なお,児童へのビデオ撮影については,対象児童および保護者,及び教諭の同意を得て実施した.また本研究目的以外には用いない.
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