研究概要 |
本研究は世界に例のない、新・認知的不協和理論を学校のいじめ場面における援助行動へ適用した研究である。 本年度は研究計画の最終年度に当たり、以下に述べるように、平成13年度・14年度の実験的研究を総括し、その発展的可能性と問題点等をレビューすることを主とした。 これまで、平成13年度に、「いじめ傍観児の認知的不協和と援助行動の関連」について実験的研究を行い、従来の研究結果から予想されるように、認知的不協和は援助行動によって、解消傾向を持つことが明らかになった。 平成14年度には、追加資料を得、不協和理論の新しいパラダイムつまり偽善パラダイム(Aronson,1999)を用い、いじめ傍観児の問題に応用する実験的研究を行った。これはいじめという現実世界の問題解決に、不協和理論及び不協和技術が適用できる可能性を検討したものである。その結果、援助行動は認知的不協和の心的葛藤を解消する方策として役割を果たすことが明確に実証された。つまり、援助行動をすることによって、認知的不協和は減少し、他の(態度変容のような)不協和の解決方法は不要になることを示した。 また認知的不協和の大きさは不協和と援助の関連性を媒介しているという新しい知見を得ている。つまり、援助行動の生起率は不協和の程度が高い被験者より不協和が中程度の被験者の方が高いことを明らかにしている。さらに、いじめへのピアサポートプログラム開発に偽善パラダイムを用いる有効性を示唆した。 平成15年度は、向杜会的行動を促進する不協和研究の枠組みを適用した応用研究のレビューを行い、Aronson(1999)の提唱する新しい不協和の操作的技術(偽善パラダイム)の特徴について、今後の応用研究の可能性について論じた(岡山大学研究集録,第122号,195-200)。
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