研究概要 |
ストレス低減を目的として行われる対処は,問題焦点型対処と情動焦点型対処の2つに分類することができる。対処方略の有効性は状況の制御可能性との交互作用により決定され,制御可能な状況では問題焦点型対処方略が,制御不可能状況では情動焦点型対処方略が有効だといわれている。状況の制御可能性に応じて,採用する方略を柔軟に変えることがストレス低減には重要だといえる。そのため,特定の対処採用に固執することは,状況に応じた柔軟な採用を阻害することになるため,ストレスを増大させることにつながる。 本年度は,問題焦点型対処の採用に固執しやすいと考えられる個人特性であるタイプA行動と制御欲求という個人特性に着目し,これらの個人特性が対処方略採用とストレス反応の生起に及ぼす影響について検討した。調査対象者には,看護従事者を用いた。問題焦点型対処の採用には,タイプA行動(ワーカホリック・完全主義傾向)と内的制御欲求(自分で制御したいという欲求)が関与していることがわかった。情動焦点型対処の採用には,タイプA行動(敵意性)と外的制御欲求(他人に解決してもらいたいという欲求)が関与していた。対人依存的対処は,内的制御欲求と外的制御欲求の双方が関係していた。ストレス反応については,以下の通りである。悲観傾向とタイプA行動の完全主義傾向が高く,情動焦点型対処を採用すると,抑うつ感を強めることがわかった。外的制御欲求が低く,情動焦点型対処を採用すると身体反応を生じやすくなることがわかった。以上のように,事態の制御にこだわるという固執傾向が,問題焦点型対処の採用を促進させ,抑うつ感を高めていることを明らかにした。
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