研究概要 |
ストレス状況では,ストレスの低減や緩和を目的として対処が試みられる。対処方略には問題焦点型対処と情動焦点型対処があり,対処の効果はストレス状況の制御可能性と相互作用の関係にある。そのため,ストレス状況の制御可能性を正確に認知し,それに併せて対処方略を採用するという柔軟な対処採用が大切となる。制御可能性の認知が不正確だと,効果的な対処採用が難しくなり,ストレスを高めることにもつながりかねない。 本年度は,制御可能性の認知に歪みがあると考えられるタイプA者と悲観主義者を用いて,制御可能性の異なるストレス状況における対処採用とストレス反応を検討した。ストレス課題には文字を入れ替えて意味のある単語にするアナグラム課題を用い,有意味な単語の割合により制御可能性を操作した。条件群は,タイプA群・悲観主義群・統制群の3群であった。制御可能性は30%,50%,70%であった。制御可能性の認知は,悲観主義群で一貫して低く,タイプA群は統制群と代わりがなかった。採用する対処方略において,タイプA群は制御可能性にかかわらず問題管理型対処を採用し,情動接近型対処も他の2群よりも多く採用することがわかった。一方,悲観主義群と統制群は制御可能性が高いと問題管理型対処を採用する傾向が認められた。ストレス反応において,主観レベルでは群間差は認められなかったが,拡張期血圧は統制群よりもタイプA群と悲観主義群が高いことが示された。以上の結果から,タイプA群は制御可能性の認知に歪みはないが,対処方略の採用に偏りがあり高ストレスに結びついているものの,悲観主義群は,制御可能性の認知がストレスの高さに結びついていることが示された。
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