1、過去十数年来継続してきた、人間の多様性への寛容に関する研究結果について、各種通信手段(電子メール、ファックス、電話、手紙)を用いて、米国と中国の研究者と相互に討論し、検討を深めた。 2、同時に、文献的研究を行い、相互討論と検討の結果と併せて、さらに吟味し、また、予備的調査を行い、今回の「他者と自己への寛容の機構」解明へ向けての調査の基盤となる構想を得た。 3、「希望の心理学へ向けて」と題する論文で、「希望-信頼-寛容」という枠組み、すなわち希望の喪失が、自己と他者への信頼を動揺させ、これが寛容を破壊する、という仮説を提出した。ここでは、「寛容の機構」の解明に際して、従来の「個人主義-集団主義」に加え、「希望」と「自己と他者への信頼」を位置づけた。 4、これらの基礎作業の後、10月初旬に渡米し、米国の研究者と集中的に相互討論を重ね、「希望-信頼-寛容」に関する調査項目、及び「人間の多様性への寛容」に関する調査項目を吟味し、共同で、2種類の測定用具(それぞれについて日本語版と米語版)を開発した。中国の研究者と一緒に開発することができなかったため、次年度、中国を訪問して、中国語版の測定用具を開発する予定である。 5、開発された2種類の測定用具を用いて、日本の小学生・中学生・高校生を対象に調査を実施した。現在基礎整理を終了し、分析の途上にある。米国については、調査実施のために、各種機関と交渉中である。 6、これらに加えて、日本において、自己と異なる他者との交流経験が他者への寛容に及ぼす効果について、障害者を取り上げて、小学生を対象とする調査を実施した。交流経験の有無以上に、交流経験の質、すなわち、そこにおける喜びや学びの存在、が重要であることが明らかにされた。
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