平成15年度においては、米国と中国の研究者とメールなど各種の通信手段を駆使して意見交換しながら、次のような研究を実施するとともに、3年間に渡る研究のまとめを行った。 1.日本と中国で実施した「自己と他者への寛容」に関する調査結果を再度分析し直し、一つのモデルを提案した。すなわち、(1)信頼が希望を生み、希望が寛容へと導く、(2)他者からの信頼だけでは、寛容は生まれず、他者からの信頼が、希望を介してはじめて、寛容が生じる。また、(3)他者からの信頼が自己への信頼を生み、これが希望へと繋がる。調査全体を通じて、日本の児童生徒は、寛容と関連する希望が、他国と比べて、非常に弱いことが示された。また、希望の涵養の鍵を握る「自己への信頼」が特に低い事実も示された。日本の児童生徒において、「自己への信頼」をどのようにして育成するかが今後の重要な課題として提出された。 2.一度実施し、一部に手違いが見つかった米国で、2つの調査を再度実施した。現在資料を分析中であり、本年中には、検討結果をまとめる予定である。 3.日本の過疎地域において、児童生徒を対象として、地域における生活の変化、及び信頼と希望に関る新たな調査を実施し、30年前のデータと比較しながら、結果を分析し、生活の変化が、自己への信頼や希望に大きく影響しているのではないか、との示唆を得た。 4.希望・信頼・寛容の相互関連に関する研究結果を、日本教育心理学会、日本心理学会、及び日本発達心理学会で発表した。来年度に開催される国際行動発達学会や国際心理学会議等の国際学会でも発表を予定している。 5.3年間に渡って実施してきた研究結果をまとめて、報告書として公刊した。
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