【目的】本研究は、容貌に障害を持つ被験児(ユニークフェイス児)の対人コミュニケーション場面における表情の特徴を吟味することを目的とした。 【方法】被験児:5歳〜9歳、また12歳〜15歳の口唇裂口蓋裂児94名、およびこの疾患をもたない児童、生徒50名。 面接:9歳以下の被験児は母親が面接者となり、7分程度の面接をした。また、12歳以上の被験児は、発達心理学専攻の女子大学院生が面接者となり、15分程度の面接をした。面接は、半構造化面接法により行った。 撮影:面接者と被験児は、1.7mの距離を置いて、対面して椅子に座った。面接者の前に2台のカメラを設置し、1台は被験児の顔を、1台は被験児の上半身を撮影した。また、被験児の後ろに1台のカメラを設置し、被験児の頭越しに面接者の全身を撮影した。 【結果】2名の心理学専攻の大学院生が、4-point Likert Scaleによって、被験児の鼻と唇の変形の程度、唇と顎の動きの不自然さ、視線逸脱の不自然さについて評定を行った。その結果、両評定者、いずれの尺度とも、口唇裂口蓋裂群の方が、対照群よりも有意に得点が高かった。また、それぞれの尺度の間で有意な正の相関が見られた。なお、これらの尺度には、有意な年齢差は見られなかった。 【考察】本研究の結果は、口唇裂口蓋裂児の鼻の変形や唇の瘢痕などの審美的要因の他に、口唇部の動きや視線逸脱の不自然さも、彼らの対人コミュニケーションに影響を与えていることを示唆した。特に、面接者に視線を合わせない態度は、熱意に乏しい発話者、あるいは無関心な聞き手として知覚される可能性がある。就学前後の児童から、これらの行動が観察されたことから、発達の早い段階から、親や幼稚園(保育所)の教師も含めた、総合的な心理社会的介入が必要であると考えられる。
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