平成13年度は、次の2つの研究を行った。研究1は、自閉症児とその養育者を対象に行った研究である。この研究では、動作法の「とけあう体験の援助」による子どもと養育者の心身の体験過程を生理心理学的指標に基づいて検討した。また、快適な心身の体験による両者のコミュニケーションの形成過程について検討した。その結果、動作法の体験によって両者に心身の安定が得られ、良好なアタッチメントが形成された。それにともない、子どものコミュニケーション行動に発達的変化が認められた。これらの結果から、動作法は、次の効果をもたらす考えられる。(1)子どもの不安・緊張を軽減し、アタッチメントの基盤となる安定した情緒の発達をもたらす、(2)養育者の育児不安や育児ストレスを軽減し、子どもへの愛着形成を促進する、(3)快適な心身の体験を共有することによらて親子のコミュニケーションが促進される。 研究2では、出産への不安や育児不安、わが子に対する虐待への不安をもつ妊婦に対する動作法の援助過程について検討した。その結果、動作法の援助による快適な心身の体験を通して、そうした態度や不安が解消し、胎児に対する愛着形成が促進された。研究に参加した3名の妊婦はいずれも元気な赤ちゃんを産み、産後の経過も順調だった。フォローアップにおいても、良好な母子関係が報告された。これらの結果から、動作法の援助は次のような効果をもつと考えられる。(1)母親になることに対する肯定的な感情をもたらす、(2)育児不安や育児疲れ、授乳不安などのマタニティ・ブルーを軽減する、(3)虐待の世代間伝達の連鎖を断ち切る。
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