本研究では、「スクールカウンセリングのシステム構築」に関して、(1)システムユーザー(生徒)のニーズおよびメンタルヘルスに関するアセスメントツールの開発、(2)利用されやすいスクールカウンセリングサービスについての検討、(3)心理教育プログラムの効果測定、という3つの観点から、主に中・高校生を対象とした4年間にわたる調査研究を行った。 (1)に関しては、生徒の仲間関係とメンタルヘルスの関係を検討するために「仲間関係発達尺度」を完成させ、横断的および縦断的研究を行い、仲間関係が生徒のサポート要因であると同時にストレス要因でもあることを示した。また、性別や学年別に、その仲間関係の特徴について検討を加えた。また、生徒の立ち直りの力に関して調査研究し、生徒向け「レジリエンス」(立ち直りの力)尺度も開発した。不登校経験生徒らに関して、レジリエンスについては縦断的研究を行い、レジリエンスが適応やメンタルヘルスを予測することを示すとともに、心理教育的プログラムについては、彼らのニーズの特性を明らかにした。(2)に関しては、生徒が援助を求めるかどうかについての認知的な枠組みである「被援助志向性」という概念を中心に、生徒の「被援助志向性」を高める生徒側の要因とカウンセラー側の要因について検討し、生徒が抱くカウンセラーイメージとカウンセラーの行動が、利用しやすさに影響を及ぼすことを示した。(3)に関しては、近年、集団を対象とした予防的開発的な心理教育活動として注目されている「ピアサポート・プログラム」(仲間同士で支援し合うために必要なスキルや知識や態度を、学習指導と同じ手続きによって、組織的に教育する計画)を、複数校に組織的に導入実施したある自治体の中学校教員および管理職を対象にその効果評価を行い、ピアサポート活動の必要性が教職員間でおおむね肯定的に評価されていることを示した。また、プログラム実施に際しての具体的な問題や課題についても明らかにした。 これらの研究成果は、各調査協力校にフィードバックされ、スクールカウンセリングシステムをモニターし、評価、改善のための資料として活用された。また、公立高校のカウンセリングシステムや、自治体の学生ボランティアシステムなど、新たなカウンセリングシステムの開発プロジェクトの際に、システム構築の指針として活用された。
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