本研究は日常の社会的相互交渉において、幼児がどのように日常会話でトピックを継続していくのかを明らかにすることを目的とし、本年度はその分析の枠組みを作る第一段階としての予備的分析をおこなった。子ども間の会話には、クラスの同年齢児の子どもや、統合クラスに在籍する発達障害児との相互交渉、保育者との相互交渉も含んだ。第1に、幼児は日常会話でどのように会話を構造化しようとし、どのような対話者であろうとするのか。また会話における相手の発話意図をどのように推測するのかを関連性理諭から検討した。第2に、多様な語用論的な知識のうち(1)年齢により使用可能な語用論知識とは何か、(2)それらが実際の会話場面でどのような重みづけで活用されているのかを検討した。 平成13年度は会話に関する幼児の語用論知識の発達を明らかにするために、どのように幼児が日常会話の中でトピックの継続をしているかをUSAでの英語児、日本での日本語児のデータを収集している。データは、統合保育児も含む2歳児、3歳児、4歳児、5歳児クラスの子どもたちを対象とし幅広いが、本年度は少数事例め会話や相互交渉の詳細な予備的分析を行い、分析指標の全体的枠組みをつくることを中心とした。 会話の基本構造として1.話者交代のルール、2.隣接対、3.先行連鎖、4.会話の開始と終了という分析軸が取りだされた。また子どもが会話でのトピック継続に当たり、1.共同体共通の基盤(百科辞典的知識)、2.個人的共通体験に基づく知識、3.現前の環境や「場」の状況、4.非言語情報(体の動きや身振り)、5.先行する発話内容、などコンテキストのどれを利用しやすいのかという分析軸を取り出した。さらに意図の明示化が行なわれるコミュニケーションについてのエピソードを取り出し、会話相手の違いによる差異を比較した。
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