研究概要 |
本研究は日常の社会的相互交渉において、幼児がどのように日常会話でトピックを継続していくのかを明らかにすることを目的としている。子ども間の会話には、クラスの同年齢児の子どもや、統合クラスに在籍する発達障害児との相互交渉、保育者との相互交渉も含んだ。平成13年度に引き続き、保育所での日常観察データを収集することと並行して、分析を進めた。平成14年度は語用否定のみられる会話での日常会話の中でトピックの継続をしているかを分析した。また日常会話との比較検討のためドラマの中の子どもの日本語についての質問紙調査および実際に放映されているドラマのテクスト分析を行い、その特徴を明らかにした。 幼児間の語用否定の会話として、1.言語による語用否定の出現数の年齢差はみられないが,年長児ほど行為としての語用否定が減少するので、否定総量は減少た。3.否定発話は相手の否定的感情を増幅させ、否定ルーティン(Garvey、1987)という交換系列の基本型がみいだされた。これは発話意図と関連性理諭から検討された。4.年長児では,方略を用いた相互的発話や行動が,否定的感情を増幅させないことから、会話におけるトピックの継続がおこなわれた。年齢にともなう語用論知識の差が語用論否定の使用に影響した。 ドラマの中の子どもの日本語は日常会話に比べ、トピックの継続という点から次の特徴がみられた。1.非対称な発話量や発話機能、2.会話の展開を一定方向に意味づける発話の存在が、過剰な解説や、会話のナラティヴ(語り)傾向を高める、3.会話の省略が少なく発話における構文完成度が高い槌、二者以上の発話の重なり、トピックの逸脱や発展が極端に少ないなどがみいだされた。
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