研究課題/領域番号 |
13610162
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
佐伯 胖 青山学院大学, 文学部, 教授 (60084448)
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研究分担者 |
小林 紀子 小田原女子短期大学, 幼児教育学科, 助教授 (20331499)
刑部 育子 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 講師 (20306450)
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キーワード | 進化心理学 / 応報戦略 / 子どものあらそい / 戦いごっこ / 3歳児 / 4歳児 / 心の理論 |
研究概要 |
本研究は、近年大きく発展してきている「進化心埋学」の知見をもとに、人類が長い進化を経て、互いの利害対立を超えた協調社会を構成・維持することに寄与する(すなわち、「進化的に安定な戦略(Evolutionarily Stable Strategy : ESS)」である)「応報戦略(Tit-for-Tat : TFT)」の行動様式を成人もしくはかなり年齢の低い幼児も生得的に獲得しているという実験心理学的手法から明らかにされている知見をもとに、実際の幼児の生活場面での「あらそい(戦いごっこを含む)」行動にも、その傾向性の萌芽となるものがあるのか、それが年齢が進むことによって、どのように発達するものであるかについて、実証的なデータをもとに、明らかにしようとしたものである。 平成14年度には、子どもに読み聞かせられる昔話や童話のなかの「あらそいとその解決」について詳細に調べたところ、「あらそい」の解決についてのさまざまな「知恵」の多くが、進化心理学でしうところの「応報戦略」の多様なバリエーションであることが明らかとなった。また、保育場面についてのフィールドワーク研究から明らかとなった幼児の遊びにおける仲間づくりについて、本年度は、進化ゲーム論の枠組みでモデル化して分析をしたところ、グループの「リーダー」を立て、仲間たちが彼に従属するという行動は、進化ゲーム理論で十分に説明できることも明らかになった。 以上のように、平成13年度〜平成14年度の研究を通して、進化心理学は幼児の社会的な関係づくりの知恵を解明することに大いに貢献しうることが明らかとなった。とくに、「あらそい」や「葛藤」場面を乗り越える知恵として、適応的な行動特性を生得的傾向として幼児に備わっているか、もしくは、その学習が容易となるような「水路付け」された学習特性を備えていることが明らかになり、幼児の発達と教育に関する研究に、進化心理学からの展開が、今後とも十分に期待できることが明らかになった。 平成14年度は最終年度であるため、これまでの研究成果をまとめて報告書を作成した。
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