今年度は、各研究の分析を行うとともに、研究全体の総括を行った。 研究1:感情認識における関係志向・独立志向の発達的検討 前年度に、日米小学生を対象とし、さらに感情生起が小学生の持つ友人概念とどのように関係するかどうかを検討した。小学校五年生を対象とした感情場面の認識とその対処についての質問紙に加えて、友人概念についての質問紙を実施した。アメリカでのデータはメスキータが収集した。その結果を、文化的自己観、西欧諸文化では個人の権利を根底に据えた相互独立的人間観があるのに対して、東洋文化では対人関係への主体的関与を第一とする相互協調的人間観があると指摘されていることの分析から、検討した。 研究2:感情認識における関係志向・独立志向発達過呈 昨年度の幼児の感情認識の場面をビデオで録画したものを編集し、刺激ビデオを作製した。大学生や幼児教育関係者を対象に刺激ビデオに対して、どのような解釈をするのか、インタビュー調査を行った。また子どもが同じ刺激をどのように認識するのかについて、質問紙を開発し、データを収集した。これらの結果については、現在分析中である。また、経済・社会的要因と幼児教育の意味について、ethnographicalな検討を行った。 具体的なデータを踏まえて、日常場面を通して形成される感情喚起の様態を認知評価理論に依拠しつつ検討し、場の評価次元の性質の文化的相違の結果、感情経験の質も文化に大きく依存するという可能性について、指摘し、報告書を完成した。
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