1.コンピテンスと文化的自己観の相互関係の確認 30代・40代・50代成人合計600名を対象とした郵送調査を実施した。この調査は、(1)Harter(1986)の成人用コンピテンス尺度、(2)高田・大本・清家(1996)の文化的自己観尺度、(3)高田(1998)の成人規範尺度、を含むものである。約30%の回答率を得、予備的分析を行ったところ、以下のような結果を得た。(1)コンピテンスに関し、Harterが北米文化を対象として見出したようなコンピテンスの下位領域は明確には認められないこと、(2)加齢と共に相互碑立性は上昇し、相互依存性は低下すること、(3)加齢と共に規範遵守意識は上昇すること。これらはいずれも従来の知見を再認するものである。 2.コンピテンスと文化的自己観に関する行動観察 幼児期〜児童期前期のコンピテンスの諸様態に関する行動観察技法は、従来、一応の標準的技法が得られているが、この時期における文化的自己観の行動的反映に関する研究ならびに技法は皆無である。そのため、群馬大学付属幼稚園において幼児を対象とした予備的行動観察ならびに面接を実施した。その結果に基づき、相互独立性・相互協調性に関する行動観察カテゴリーを分析・開発中である。 3.日本的コンピテンス測定のための暫定尺度の開発 1で述べた資料について、(1)〜(3)の尺度の全てを含む探索的因子分析を実施したところ、各尺度ははっきりとは区分されず、相互が混淆した因子が幾つか認められた。この結果を基礎に、日本的コンピテンスの構造をモデル化し、それに沿った尺度を開発するため、現在、確証的因子分析を通じて幾つかのモデルの妥当性を比較検討中である。
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